スウェーデンなどの北欧の国々では、医療や福祉制度が充実しています。そこには医師などの医療従事者の役割も大きいといえます。
病院の採用担当者としては「スウェーデンの医師はどのような働き方をしているのだろうか?」と思うこともあるでしょう。
そこで、本記事では、スウェーデンの医師の働き方を解説します。医療制度や労働時間なども紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
スウェーデンの医療制度
スウェーデンの医療制度は、国民の平等と個人の尊厳を尊重し、特に最も必要とする人々に優先的に医療サービスを提供することを目指しています。
この制度は医療と保健を担う機関が国、ランスティング、コミューンの3つに分かれている点が特徴です。各機関はそれぞれ異なる役割を果たし、全体として包括的な医療サービスを提供しています。
国は医療政策の立案と規制を担当し、全体的な医療制度の枠組みを設定します。これにより、全国的な医療サービスの質を確保し、均一な医療基準を維持することが可能です。
ランスティング(県議会)は地域レベルでの医療サービスの提供を担当します。病院や専門医療施設の運営を行い、地域住民に高度な医療を提供します。これにより、地域ごとの医療ニーズに応じたサービスが提供されます。
コミューン(市町村)は初期医療や地域グループでの医療サービスを担当します。コミューンは家庭医や地域の診療所を運営し、住民が日常的に必要とする医療サービスを提供します。また、予防医療や健康促進活動も行い、住民の健康維持にも努めています。
このように、スウェーデンの医療制度は3つの異なる階層から成り立っており、それぞれが連携して患者に質の高い医療サービスを提供する仕組みです。
スウェーデンの医療従事者
医療従事者は専門分化が進み、看護師も専門分野ごとに資格が設けられています。
例えば、救急看護やがん看護、精神科看護など、各分野の専門知識を持つ看護師が求められています。これにより、患者に対してより質の高いケアを提供することが可能です。
しかし、看護補助職種は減少しており、これが全体としての医療従事者の不足に拍車をかけています。
具体的には、1995年には約35万人いた医療従事者が、2003年には約31.2万人に減少しました。特に医師や看護師の不足が顕著であり、これが医療現場における大きな課題となっています。
このような状況を改善するためには、人材確保と資質向上が課題とされています。
さらに医療の質を守るために各種対策も検討中です。テクノロジーの導入による業務の効率化やチーム医療の推進などが考えられています。
結果として、医療従事者一人ひとりの負担を軽減し、患者に対してより良い医療サービスの提供を目指しているわけです。
スウェーデンの医師の働き方
スウェーデンの医師の働き方は、他国と比較していくつかの特徴があります。医師の労働時間が比較的短く、週平均で40時間以下とされています。
これはワークライフバランスを重視するスウェーデンの労働文化に由来しているのでしょう。また、長期休暇を取得する場合もあり、医師たちはリフレッシュして業務に従事できます。
スウェーデンの医師の年収は、世界各国の医師に比べると、それほど高くありません。
しかし、ワークライフバランスを重視できる働き方もあり、必ずしも年収を重視する医師だけではないでしょう。このワークライフバランスの魅力により、スウェーデンには移民医師も増加しています。
他にも、スウェーデンでは医師同士の協力体制が築かれており、チーム医療を重視しています。
医師だけでなく、看護師やその他の医療従事者との連携が密接に行われることで、患者に対する包括的なケアが可能です。
日本の医師の働き方
日本の医師は、長年、長時間労働やワークライフバランスが課題とされてきました。しかし、働き方の改善にも着手しています。
具体的には、医師の労働時間の上限規制の導入、勤務体制の見直しと時間外割増賃金の改定、休憩時間の確保と健康管理の推進などが行われています。
この改革の背景には、常勤勤務医の半数が過労死ラインを超える業務に従事しており、過重労働が深刻な問題となっている点が挙げられます。
また、救急、産婦人科、外科、若手医師などで時間外労働が特に長時間化する傾向にあり、医師の地域偏在も完全には改善されていません。
さらに、医師には多岐にわたる業務が集中しており、高度化する医療に対応するための知識・技術の修練に多くの時間が必要となっています。
医師の働き方改革には、病院全体での取り組み、タスクシフティング、他業種の理解なども必要不可欠であり、できるだけ早急な解決が望まれます。
医師の健康と医療の質の向上を目指す重要な取り組みですが、課題も多く、今後の動向に注目が集まっています。
スウェーデンと日本の医師の働き方の違い
スウェーデンの医師と日本の医師では、現状として働き方に違いがみられます。スウェーデンの医師はワークライフバランスを重視しています。
一方、日本の医師はまだまだワークライフバランスを実現できているとはいえません。医師の採用においては、ワークライフバランスを実現できる病院であれば応募も増える可能性があります。
まとめ
・スウェーデンの医療制度は、国、ランスティング、コミューンの3つから構成される
・スウェーデンの医師はワークライフバランスを重視し、有給休暇の取得もしやすい環境である
・日本とスウェーデンの医師の働き方を比較すると、ワークライフバランスや労働時間などの面で違いがみられる
本記事のまとめ