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医師不足の時代に生き抜くための医療機関が取るべき人材戦略

常に医師が足りず求人を出しても応募が来ない。そんなお悩みを抱える病院の採用担当者の方は多いのではないでしょうか。これからの時代は医師にとっての働きやすさが重視される時代です。

本ページでは「非常勤」をキーワードに、医師のメリットと病院運営上のメリットを両立した働き方について解説します。明日からすぐに実践できる内容になっていますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

目次

医師は全体で34万人という限られた医療資源

令和2年段階で、全国で34万人弱が医師として登録されています。その中で、施設代表者を除いた勤務医は、病院では約21万人、診療所では約3.5万人です。

この数字は全国に病院が約8,000件、診療所が約10万件存在していることを考えると、医師が圧倒的に不足していることが分かります。

また、実際に転職をし得る50歳未満の医師は全体で約16.5万人しかおらず、医療機関は基本的には人材が不足するという環境に置かれていることがデータからも感じることができるかと思います。

直近の深刻な医師不足、また将来的には人口減少に伴う医師余りが起きるとも言われていますが、この不安定な医師需給に対して私たちはどのように向き合えば良いのでしょうか。

大多数の医師が常勤先を抱えている中、キーワードは「非常勤」

医師不足に対抗するキーワードは「非常勤」の選択肢です。

医療業界においては医局制度による影響もあり、かねてから常勤で働くということが当然とされてきた業界でした。

実際に現在も9割近くの医師が常勤先を持っており、この文化もまた各医療機関にとっての医師不足を加速している原因でもあります。

すなわち、医師の流動性が乏しく、互いの医療機関で医師の腕を引っ張り合っている状況が起きているのです。

これでは、大病院や有名病院など力の強い医療機関の引っ張り勝ちとなってしまい、一般的な医療機関ではますます医師の確保が困難となってしまっています。

これからの時代は2つの理由から「非常勤」という選択肢が活躍すると見込んでいます。

1つ目の理由として、2024年4月からの働き方改革による時間外労働規制が挙げられます。

これは、勤務間インターバルの確保や代償休息のセットが義務化され、当直を行なったあとは、そのまま日勤へは移行できなくなるため、これまでの医師数では病院の運営が困難となります。

そこで活用すべきが非常勤医師です。例えば当直や新患外来など、常勤医師が行わなくても良いであろう業務を非常勤医師が担うことで、常勤の負担が軽減されると同時に病院運営の課題もクリアできます。

また第2の理由として女性医師の増加が挙げられます。2020年頃に医学部への女子入学者が増えました。

2030年頃になると、これらの世代が研修医や働き盛りの中心になります。

しかし、その年代には同時に女性であれば妊娠出産などのライフイベントが重なる方も多いでしょう。

そこで非常勤枠を積極的に確保することで、例えば妊娠出産後でも週1〜2程度であれば勤務が可能な医師を採用することができると考えられます。

専門医の取得や維持のためにも継続勤務が必要な医師にとっては非常勤は大変魅力的な働き方であり、医療機関と医師のwin-winな関係となれるのです。

また、このような柔軟な働き方を受け入れてくれる医療機関に対する医師側の気持ちを考えても大変好印象を与え、いずれ勤務日数の拡大や常勤としての移行なども十分想定されるため、非常勤医師の積極的な活用は長期的に考えても是非取り入れていきたい戦略です。

さらに、現在の医師不足、将来的な医師余りの可能性という医師需給の変化にも非常勤の採用は力を発揮します。

常勤医師は言い換えると固定費、非常勤は変動費とみることができます。医師余りの時代に差し掛かった際に常勤医師で組織を固めていると、病院経営上固定費である人件費が重くのしかかります。

非常勤という変動比率を高めておくことで、いざ医師数の削減を検討することになった際はスムーズな体制移行を実行することが可能です。

週4日勤務にすることで医師の年収を上げられる

週4日勤務にすることで医療機関の人件費を減らしながら医師の年収を上げることができます。

例えば、貴院における週5日勤務の給与テーブルを1,500万円とします。

それに対して、週4日勤務では1,200万円の提示となりますが、残り1日を外勤(ネーベン)にあててもらいます。

医師は日給においては常勤よりも非常勤での給与が相場が高いことは既知の事実かと思いますが、例えば週1回の外勤で10万円が発生するとすれば、年収換算で500万円が外勤先からの給与となります。

貴院での給与と合わせると1,700万円の収入となり、貴院のみで働く場合と比較して、医師は200万円も収入が増加するのです。

もちろん医師それぞれ働き方に対する考え方は異なるため、週1日を外勤に当てるのか、休日とするのかは個人の裁量によりますが、いずれにしても医師にとってメリットしかない提案となるのです。

週5日勤務のみで選択肢がない勤務先と、週4日勤務で残り1日をどのように過ごすかを選べる勤務先、どちらが選ばれやすいかは一目瞭然でしょう。

また、そのような働き方が浸透することで、勤務医24.5万人が週1日フリーで動くことができると、月間で98万人の非常勤枠を埋めることが可能になります。

常勤で週5日みっちり働かせることは大きく時代遅れであり、これからの時代は「ワーカーシェアリング」が医師不足を乗り切るキーワードになるのではないでしょうか。

時代の変化に合わせた柔軟な思考変革が成功のカギ

いつの時代も状況は変化し、もちろん採用環境も変化していきます。

ひと昔前は医局絶対王政の時代で、各医療機関も医局との良好な関係を維持していれば医局員を必要な数派遣してもらうことができていました。

しかし、現在では医局の力も弱まりつつあり、十分な医師数の確保はおろか、医局派遣を打ち切られるケースも多発してきております。

すなわち、医師の面倒を見てくれる時代は終わり、すべて自院でやりくりする必要が生じています。

時代のニーズに合わせた適切な組織運営を行い、働く側と雇う側が共にwin-winな関係になれるような働き方を提案することで、医師不足の時代を生き抜くことができるのではないでしょうか。

まとめ

本記事のまとめ
  • 勤務医は全国に24.5万人しかおらず、それぞれの医療機関が医師の腕を引っ張り合っている状況であり、そのような状況では医師不足は解決されない
  • 働き方改革への適応や女性医師の増加により、非常勤医師の採用はますます重要になっていき、うまく活用できた医療機関が今後の病院運営において人材の課題をクリアできる
  • 医師の需給変化にも非常勤医師の採用は効果を発揮し、人件費を固定費から変動費にすることで柔軟な組織体制の移行が可能に
  • 週4日の勤務を採用することで、病院側の人件費を削減しながら医師の働き方の満足度を向上させることができる
  • 時代のニーズに合わせた働く側と雇う側が共にwin-winな関係になれる適切な組織運営をすることが医師不足の時代を生き抜くことができるヒント
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