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医師の当直は時間外労働?働き方改革による医師の当直への影響

2024年に医師の働き方改革が開始されるため、今まで以上に時間外労働の管理が必要です。

医師の時間外労働の中で気になる業務として当直があります。

ここでは、医師の働き方改革の変更内容だけでなく、当直自体は時間外労働に該当するのかまで紹介します。

目次

医師の労働時間の現状は非常に過酷

2020年に厚生労働省が発表した内容によると、「病院・常勤勤務医」の場合、男性医師の41%、女性医師の28%は1週間の労働時間が60時間を超えていることが分かりました。

それに伴って、病院勤務している常勤勤務医の約4割が「過労死ライン」と言われる月80時間以上の残業をしていることも厚生労働省が発表した「令和元年 医師の勤務実態調査」によって分かっています。

過酷な労働時間が原因で、過労により医師の健康状態が悪化し続ければ、医療の質や安全性の確保が難しく、医師の過労死や労災認定もまれなケースではありません。

実際、厚生労働省がまとめた過労死白書によると、2010年から2015年までの5年間に労災と認定された医療関係者285人のうち、過労死は47人で、医師が4分の1近くの11人を占めています。

それだけ多くの件数がある背景として、慢性的な人手不足による業務負荷の増加、オンコール・休日診療、教育・指導、管理的業務、学会・論文作成などの理由があげられます。また、過労死までは至らなくても、現在の労働環境が続くと健康状態を悪化する医師も多く存在します。

このような医師の労働環境を改善するために、2024年から医師の働き方改革が開始されることになりました。

参考:厚生労働省「第9回 医師の働き方改革の推進に関する検討会 医師の勤務実態について」

参考:厚生労働省「令和元年 医師の勤務実態調査」

参考:厚生労働省「働き方改革」医師の働き方を考える

医師の働き方改革で何が変わる?

医師の働き方改革によって大きく下記の内容が変わります。

時間外労働時間の上限が規制される

勤務している医療機関によって、A水準・B水準・C水準の3つに分類され、それぞれの水準によって時間外労働時間の上限が規制されます。

それぞれの時間外労働時間の上限は下記です。

各水準各医療機関の役割月間の残業時間年間の残業時間
A水準一般的な医療機関などで診療する医師100時間未満960時間以内
B水準救急病院や救急車の年間受入数1,000台以上の病院など、緊急性の高い医療を提供する医療機関・地域医療確保のために必要な役割を果たす医療機関100時間未満1,860時間以下
C水準研修医の研修などを行う医療機関100時間未満1,860時間以下

参考:厚生労働省「時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務」

追加的健康確保措置が開始

医師の働き方は、一般会社員の働き方とは異なるため、やむを得ず一般の労働者に適用される時間外労働の上限時間を超えて医師が働かざるを得ない場合に、医師の健康・医療の質を確保するために行われるもので下記の2つに分類されます。

参考:徳島県医師会「医師の働き方改革について」

追加的健康確保措置①

追加的健康確保措置①は、「連続勤務時間制限」「勤務間インターバル」「代償休息」に分かれます。

  • 連続勤務時間制限:宿日直許可を受けている場合を除き、勤務時間を28時間までとする。
  • 勤務間インターバル:当直および当直明けの日を除き、24 時間の中で通常の日勤後の次の勤務までに9時間のインターバル(休息)を確保すること。
  • 代償休息:長時間の手術・急患の対応などのやむを得ない事情によって、例外的に連続勤務時間制限・勤務間インターバル確保ができず長時間勤務を行った場合、代わりに休息を取るという措置。

*追加的健康確保措置①はA水準は努力義務、B水準・C水準は法的義務です。

追加的健康確保措置②

追加的健康確保措置②は、「面接指導」「就業上の措置」に分かれます。

  • 面接指導:時間外労働が月100時間以上となる医師への面接指導の義務付け。また、月100時間未満であっても、100時間を超える前に睡眠時間や疲労の状態などを確認し、必要に応じて就業上の措置をとること。
  • 就業上の措置:面談指導を実施した専門医の面接結果に基づき、管理者が就業禁止などの措置をとること。

*追加的健康確保措置②はA水準・B水準・C水準ともに法的義務です。

時間外労働の割増賃金率が引き上げ

ここまでの説明で分かるように、医師は過剰な時間外労働を行っているにもかかわらず、それに見合った残業代が支払われないケースが多くあります。

そのため、医師の働き方改革では、時間外労働の賃金に対して割増率の引き上げが進められ、月60時間超の時間外労働については50%以上の割増率を算出して支払われます。

この制度は、大企業ではすでに適用されていましたが、2023年4月からは医療業界を含むすべての企業で適用されます。

参考:厚生労働省「法定割増賃金率の引上げ関係」

時間外労働の上限を超えた場合に「罰則」が加わる

時間外労働時間は、医師本人だけが把握すれば良いのではなく、勤務先の医療機関も管理しておく必要があります。

医師が時間外労働時間が超えているにもかかわらず、何も対策を実施しなければ、医療機関も一般企業と同じように「6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が労働基準法第141条に規程によって科せられる危険性があります。

参考:厚生労働省「時間外労働規制のあり方について③」

医師の当直には2種類ある

当直とは、医療機関で通常の診療時間外に働くことです。

医療法第16条で「入院設備を持つ病院では医師が必ず宿直しなければならない」という規定があることから、入院設備がある病院では患者が急変する可能性に備えて、緊急事態に対処できるように宿直医が必ずいなければいけないと定められています。

しかし、医師の働き方改革が開始されることにより、今まで以上に時間外労働時間の管理が厳しくなります。そんな中、「当直」は長期間にわたって時間を拘束される業務の1つです。

実際、厚生労働省の発表によると、月に1〜4回宿直を行っている医師が約43%、5回以上行っている医師は約14%いると発表しました。

そんな当直は下記の2つに分類されます。

参考:厚生労働省「医療法」

参考:厚生労働省「医師の勤務実態について」

日直は休日・祝日などの日中に勤務すること

日直とは、休日や祝日などの日中に働くことをいいます。年末年始やお盆休み・ゴールデンウィークでも患者さんが来ないという保証はないため、いつでも呼び出しに対応できるよう病院内に待機します。

宿日直は夜間に勤務すること

夜間に勤務することを指し、病院や診療所に泊まることを想定した勤務のことです。

宿直の場合は、日によって忙しさは大きく異なり、一睡もできない日もある一方で、当直室でゆっくりと時間を過ごせる日などさまざまです。

宿日直許可のある当直は時間外労働の対象外

「宿日直許可」を受けた医療機関は、その許可の範囲で、労働基準法上の労働時間規制から適用除外となるからです。

実際、厚生労働省は「医師、看護師等の宿日直許可基準」について下記のように発表しています。

  1. 通常の勤務時間から完全に解放された後のもの
  2. 宿日直中に従事する業務は、一般の宿日直業務以外には、特殊な措置を必要としない軽度または短時間の業務に限る一般の宿日直の許可の条件を満たしている
  3. 宿直の場合は十分な睡眠がとりうること等の条件を満たしている

参考:厚生労働省「医師、看護師等の宿日直許可基準について」

上記の条件より、いわゆる「寝当直」イメージの宿日直は時間外労働の対象外です。そのため、医師の働き方改革による時間外労働の対策として、宿日直の許可件数は令和2年144件、令和3年233件、令和4年734件と前年の3倍以上になっています。

参考:厚生労働省「働き方改革の実態調査について(第2、3回)」

また、宿日直許可のある宿日直に連続して9時間以上従事する場合は、 9時間の連続した休息時間が確保されたものとみなされるため、医療機関は医師の時間外労働時間の超えを防げたり、従来よりも勤務シフトが組みやすくなるなどのメリットがあります。

それに加えて、外部の医師もアルバイトでの労働時間を抑えたいため、「宿日直許可」を取得した医療機関で働くことを希望する可能性もあるため「宿日直許可」の承認は、医師の働き方改革を乗り越えるために重要なポイントです。

ただ、原則として宿日直は週1回、日直業務は月1回が限度というように回数が制限されています。さらに宿直勤務中に、突発的な事故による緊急対応など、通常業務と同様の業務を行った場合は、医療機関は「時間外労働」として割増賃金を支払う必要があるため注意が必要です。

参考:厚生労働省「医師の勤務間インターバルと代償休息について」

参考:厚生労働省「断続的な宿直又は日直勤務に従事する者の労働時間等に関する規定の適用除外許可申請について」

まとめ

本記事のまとめ
  • 2024年より医師の働き方改革が開始され、時間外労働の管理が複雑になる
  • 宿日直許可のある当直は時間外労働の対象外になるため、うまく活用することで時間外労働の制限を気にせずに当直できる
  • ただ、何回も当直してもよいのというわけではなく、宿日直は週1回、日直業務は月1回が限度と決められているので注意が必要
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